投資家Aさん
サラリーマンの方が海外FXで一定以上の利益を出すと、給与所得とは別に税金を納めなければいけません。
ここでは、給与所得者であるサラリーマンが海外FXを利用したときの確定申告の仕方や税金の計算方法をご紹介していきます。
なお、海外FXと国内FXでは税金の計算方法が異なりますので、その違いについてもご覧ください。
プロトレーダー
サラリーマンが海外FXで利益を出したら税金は自分で確定申告する
サラリーマンの方が海外FXを利用して一定以上の利益を出したときには、自分で確定申告をして利益分に掛かる税金を納める必要があります。
なお、その際の税金計算の仕方は国内FX利用時とは異なりますので、まずはその違いについて見ていきましょう。
海外の業者と国内の業者では税金計算が異なる
最初に海外FX業者・国内FX業者を利用した場合の税区分の違いなどをご覧ください。
海外FX | 国内FX | |
---|---|---|
所得の区分 | 雑所得 | 雑所得 |
税の区分 | 総合課税 | 申告分離課税 |
税率 | 15%~55% (累進課税) |
一律20.315% |
繰り越し損益 | 不可 | 3年間繰り越し可能 |
経費計上 | すべての所得に掛かる経費が計上可能 | 対象となるFX利益に対しての経費のみ計上可能 |
確定申告が必要となる金額 | サラリーマン:20万円 | サラリーマン:20万円 |
海外FXの利益と国内FXの利益はどちらも雑所得という所得区分に入ります。ただし、掛かる税金の区分と税率が違います。
しかし、初めて海外FXで確定申告をするというサラリーマンの方の場合、いまいち上記の用語について分からない部分もあると思いますので、分かりやすくそれぞれの用語を解説しておきましょう。
- 総合課税:自分が得ている収入すべてを合算して税金計算をおこなう
- 累進課税:収入が上がるごとに所得税率が上がる計算方法
- 繰り越し:損失の繰り越しが翌年以降におこなえるかどうか。海外FXの場合は損失の繰り越しが出来ない
- 経費計上:利益に対してどの経費が計上できるのかという部分。海外FXの場合は利益に掛かった経費はすべて計上可能(複数の海外FX会社を利用していた場合にも適用)
- 申告分離課税:収入の元が複数ある場合、それぞれの収入に応じて所得税を納める方法(税率は常に一定)
- 繰り越し:3年間の繰り越しが可能
- 経費計上:利益を得た該当FX会社で発生した経費のみ計上可能
国内FXを利用していた場合には申告分離課税が適用され、その税率は常に一定の20.315%(内訳:所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)です。
それに対して海外FX利用者の場合は利益の額に応じて税率が変化する「累進課税」という方法が適用されます。
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その変化する税率について、次に詳しく見ていきましょう。
海外FXは税区分・総合課税、税率・累進課税
こちらは総合課税区分における累進課税率の表です。
※表は左右にスクロール可能
収入 | 税率 | 税率の内訳 | 所得税控除額 | 復興特別所得税 |
---|---|---|---|---|
195万円以下 | 15% | 所得税5% 住民税10% |
0円 | 一律2.1% |
195万超~330万以下 | 20% | 所得税10% 住民税10% |
97,500円 | |
330万超~695万以下 | 30% | 所得税20% 住民税10% |
427,500円 | |
695万超~900万以下 | 33% | 所得税23% 住民税10% |
636,000円 | |
900万超~1,800万以下 | 43% | 所得税33% 住民税10% |
1,536,000円 | |
1,800万超~4,000万以下 | 50% | 所得税40% 住民税10% |
2,796,000円 | |
4,000万超 | 55% | 所得税45% 住民税10% |
4,796,000円 |
海外FXを利用して利益を得た場合は、その利益額に応じて上記の税率を掛けた金額を納めることになります。
なお、国内FX利用だと税率は一律20.135%ですので、上の表と比較してみると「195万超~330万以下」の税率(20%+2.1%)になった時点で海外FX利用の方が高い税金を支払うイメージがありますが、実際にはそうではありません。
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この控除額を入れると、だいたいFXでの利益が「430万円~440万円」となったときに海外FX・国内FXの税金額が逆転しますので覚えておきましょう。
- FXでの利益が430万円だった場合:海外FX利用の方が税金が安い
- FXでの利益が440万円だった場合:国内FX利用の方が税金が安い
専門のトレーダーからすると、この「430万円~440万円」というラインが海外FXと国内FXを使い分けるひとつの基準としています。
海外FXで継続的に年間440万円以上の利益が出せるようになった場合は、国内FXとの併用を考えてみるというのも賢い選択肢のひとつです。
ただし、海外FXと国内FXの損益というのは合算することが出来ません。
これはそれぞれの収入に対する税区分が違うからですが、そうなると国内FXで損失を出したときというのがデメリットになってきますので、その点についても考慮して使い分けの判断をしましょう。
組み合わせ | 損益合算 | 例 |
---|---|---|
海外FXと海外FX | 可能 | 海外FX(A社)で利益200万円 海外FX(B社)で損失50万円 →所得税の対象となるのは損益を合算した150万円 |
海外FXと国内FX | 不可 | 海外FX(A社)で利益200万円 国内FX(Z社)で損失50万円 →合算できないのでA社利益200万円に対して所得税が掛かる(Z社の損失50万円は翌年に繰り越しが可能) |
海外FXで収入を得る場合、上記のように色々なパターンが考えられます。そのため、一概に海外・国内どちらの業者を選んだ方が良いとは言えません。
ただし、FXを始めたばかりで利益も数十万円程度という方であれば、海外FXを利用していた方が税金も安くなります。
サラリーマンの場合は利益20万円以上で申告義務が発生
サラリーマンの場合は「給与所得者」という扱いになり、FX利益が20万円以上になったとき確定申告と納税の義務が発生します。
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そこでまずは海外FX業者を利用していた場合の利益についての考え方をご覧ください。
- 利益というのは年間の利益と経費の合計額
- 仮に利益が30万円出たとしても経費が10万円以上あれば申告する必要はなくなる
- 海外FXの場合は所得に関わるすべての経費が合算できる
つまり利益といっても経費が多ければ申告をしなくて済むパターン、税金が安くなるパターンがあるというわけです。
そこで、海外FX利用時に利益をどう判断するのかというパターンをいくつか用意しました。
海外FX利益 | FX経費 | その他副業利益 | その他副業経費 | 申告の可否 | |
---|---|---|---|---|---|
パターン① | A社で利益30万円 | 15万円(取引手数料・FX取引に使ったツール代や利用料金など) | なし | なし | 合算すると利益は15万円となるので申告の必要なし |
パターン② | ・A社の利益20万円 ・B社の利益10万円 |
15万円 | なし | なし | すべて合算すると利益15万円なので申告の必要なし |
パターン③ | A社の利益50万円 | 15万円 | 10万 | 30万 | 合算すると利益は15万円となるため、申告の必要なし |
パターン④ | A社の利益が50万円 | 25万円 | なし | なし | 合算すると利益25万円なので申告の必要あり |
パターン⑤ | A社の利益20万円 | 5万円 | 20万 | 5万円 | 総合課税に属するほか副業利益を合算すると利益30万円なので申告の必要あり |
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そのため、たとえばFXを始めて利益がいきなり50万円(経費を差し引いたうえで)出たとしましょう。
こうなると確定申告が必要となり税金を納めなければいけないのですが、ほかの副業をスタートさせるために利益分から30万円以上を使って準備をすれば確定申告が不要となるわけです。
海外FXを使うメリットというのはこうした部分にもあるのですが、もちろん経費として認められるのは該当する年度における支出のみですので覚えておいてください。
次に、実際サラリーマンの方が海外FXで利益を出したときの計算方法をご紹介していきます。
サラリーマンの場合の海外FX税金計算方法
それでは海外FXで利益を出したときの税金計算をおこなっていきます。なお、ここで利益と書いているのは経費と合算したあとの金額です。
そのため、利益金額のすべてに税率が掛けられることを前提としています。
- (海外FX利益×所得税率)-控除額=所得税額
- 海外FX利益×住民税率(10%)=住民税額
- 所得税額×復興特別所得税率(2.1%)=復興特別所得税額
3つの税額を合計すると、納めるべき税額が算出される
海外FX利用時の税金計算というのは上記の通りです。FX利益195万円以下で控除額がない場合はゼロとして考えてください。
この計算方法を使って、実際に100万円の利益が出たときにはいくらくらいの税金を納めることになるのかを見ていきましょう。
海外FX税金シミュレーション【利益が100万円出た場合】
海外FXにチャレンジする人であれば、まずは「利益100万円」というのもひとつの目標だと思います。
そこで、100万円の利益を出したときにどれくらいの税金を納めることになるのかをご覧ください。
- 195万円以下の利益に掛かる税率
→所得税5%+住民税10%(+復興特別所得税) - 所得税:100万円×5%=50,000円
- 住民税:100万円×10%=100,000円
- 復興特別所得税:50,000円×2.1%=1,050円
- 50,000円+100,000円+1,050円=151,050円
ご覧のように151,050円が納めるべき税額ということになります。利益が195万円以下の場合は、控除額が設定されていないのでシンプルに利益×税率で申告額を求めることが可能です。
ちなみに、これが利益200万円になったらどうなるのか?というのも参考までに記載しておきましょう。
- 195万超~330万以下の利益に掛かる税率
→所得税10%+住民税10%(+復興特別所得税) - 控除額は97,500円
- 所得税:200万円×10%-97,500円=102,500円
- 住民税:200万円×10%=200,000円
- 復興特別所得税:102,500円×2.1%=2,152円
- 102,500円+200,000円+2,152円=304,625円
利益が195万円を超えると所得税に対して控除というものがおこなわれますので、やや計算が複雑になります。
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サラリーマンが海外FXの税金を申告するときの手順
サラリーマンの方が海外FXで利益が出て確定申告をおこなう際に必要な書類・手続き方法をご紹介していきます。
サラリーマンの場合、給与所得に関する納税の手続きは会社でおこなってくれているはずですので、ここで説明するのはあくまで海外FXで利益を出した場合の申告方法となります。
確定申告は翌年の2月16日〜3月15日までに行う
確定申告は1月1日〜12月31日分の海外FXで得た利益に対して行います。
申告の期間(タイミング)は2月16日から3月15日までと決まっているので、忘れずに申告するようにしましょう。
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海外FXの税金申告手順①源泉徴収票など必要な書類を準備
まずは海外FXの確定申告に必要な書類を準備します。このとき必要となるのは主に以下のものです。
- 海外FXにおける年間損益報告書
- 必要経費の領収書(経費をまとめた表)
- 会社の源泉徴収票
- ほか生命保険証書・ふるさと納税証など(該当するものがあれば)
こちらをベースにして確定申告書を記載し税務署に持っていくか、e-Tax(オンライン手続き)で申請するかを選びます。
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取引に使っているMT4やMT5から取得することができます。
取得をするときは申告をする年度の「1月1日~12月31日」と設定し、画面に表示したものをダウンロード・印刷してください。
FX取引やほか収入のある副業などで使った経費をまとめます。
領収書自体を提出する必要はなく、あくまで経費として使った金額をまとめた表を提出すればOKです。
(ただし、計上した領収書は7年間保管しておく必要あり)
給与所得に掛かる税金を納めていることの証明となります。
会社から発行されるものですので、それぞれの勤め先にてご確認ください。
基礎控除以外に受けられる控除額の有無を証明するための書類です。
該当するものがなければ提出・計上しなくて問題ありません。
これらを用意すればあとは確定申告書に記載していくだけです。
海外FXの税金申告手順②確定申告書類の作成
サラリーマンの方が海外FX収入などによって確定申告をする場合は、基本的に白色申告となります。
白色申告の書類は最寄りの税務署でもらってくるのが間違いもなく安全ですが、近くに税務署がなければ国税庁のホームページからもダウンロードが可能です。
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海外FXの税金申告手順③作成した申告書を提出
作成した申告書は、郵送するか、最寄の税務署の窓口に直接持っていってください。
もし税務署が遠い・時間もないという場合は「e-Tax」というオンライン申請も可能です。
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海外FXの税金申告手順④必要な分の納税をおこなう
確定申告をして納税額が「確定」すると、税金の支払い書が発行されます。あとはこの支払い書を用いて納税をおこなえば完了です。
税務署に直接持っていった場合は、基本的にその場で納税することが出来ますので分かりやすく簡単です。
ほかの申告方法を利用した場合は、納税書に記載されている期限までに納税を済ませるようにしましょう。
プロトレーダー
サラリーマンが海外FXの税金を計算・支払うときのQ&A
サラリーマンの場合における海外FXの税金・計算などに関する質問や疑問にお答えしていきます。
確定申告をしないとバレる?どうなる?
プロトレーダー
また、バレた場合は追徴課税が課され通常よりも高い税金を払うことになります。さらに悪質なケースであれば脱税と扱われるリスクもあることを覚えておいてください。
ちなみに会社にバレるかどうかについても100%バレないとは言い切れませんが、基本的に自分でちゃんと確定申告をすれば税務署から会社に通知がいくことはありません。
こうしたことも踏まえると、しっかりと確定申告をおこなっておいた方がトータルとしてメリットがあると言えるでしょう。
海外FXの確定申告時に計上できる費用とは?
プロトレーダー
(国内FX利益など申告分離課税に該当する収入の経費は合算不可)
そのため、以下のような支出が経費として計上可能です。
- FXを勉強するために買った書籍
- FX自動売買ツールの料金
- FX取引のために使っているパソコン・スマホの利用料金(一部)
- FXセミナーや勉強会の費用と交通費
- FX収入と給与所得の割合に応じた家賃(一部)
- 各海外FX業者に設けられた取引手数料
海外FXをする上で必要となったもの、もしくは必ず払わなければいけないものに関しては経費として計上ができます。
ただし、パソコンや家賃などは全額ではなく使用目的・総所得とFX利益の割合によって一部が計上可能となることを覚えておきましょう。
たとえば勤め先の収入が800万円で、FX利益が30万円だった場合は割合としてFX収入の方が圧倒的に少ないので、ほとんど経費として計上できないといったイメージです。
申告書の青色・白色ってなに?
プロトレーダー
青色申告というのは事前に青色申告の届け出・開業届けの提出が必要ですが、控除額が大きくなります。主に個人事業主が確定申告をするときに必要となるものです。
白色申告は事前に届け出が必要なく、提出する書類も簡易的なもので問題ないといったメリットがあります。